
内容紹介
閉館後の図書館の返却ポストに、雨の夜、一冊だけ乾いた本が入っていた。
蔵書印も、バーコードもない。題字は『おしまいのない童話集』。
祖母の名前で届く、位置共有の通知。一晩無料で泊まれる、誰もいないモデルハウス。上位七人だけが招かれる「鏡室」。締切前夜に見つけた、お金を取らない課題代行サイト。眠る前に枕元へ伏せておくだけの睡眠アプリ。毎朝すり減っている、十二人分の靴。自分より先に帰宅している、自分の影。
本に収められていたのは、同じ海辺の町で起きた十の出来事だった。
一話読み終えるたびに、巻末の貸出票に、鉛筆で名前が一つ増えていく。
赤ずきん、白雪姫、ラプンツェル、人魚姫、雪の女王――グリムの昔話七編とアンデルセンの童話三編から、題材だけを借りて現代の日本に置きなおした新作の怪談集です。原典の文章や翻訳文は使っていません。血や残酷な場面よりも、いつもの暮らしが少しずつずれていく怖さを書いています。一話は十五分ほどで読めます。
※本書はフィクションです。
目次
- 序章 返却ポスト
- 赤い通知
- 甘い家
- 七人目の鏡
- 名前をください
- 塔の部屋
- 眠りの棘
- 夜ごとの靴
- 声を売る配信
- 影が先に帰る
- 雪の女王が来る夜
- 終章 返却者
こんな方に
- 血や残酷な場面より、日常がずれていく怖さが好きな方
- 昔話や童話を、大人になってから読み直したい方
- 一話十五分で読める短編を、寝る前に一つずつ読みたい方
著者
蒼井冬夏。静かな怪談と、喪失と再生の物語を書いています。
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